創業115年。広島県竹原市の着物専門店。「着てこそ着物」がモットー。高品質でハイセンスな【本物の着物】を扱っています。

着物のある豊かな人生のご提案

   益吉呉服店

          〒725-0013 広島県竹原市吉名町249-6

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代表者ごあいさつ

代表者ごあいさつ

益吉宏祐(ますよし こうゆう)

代表の益吉宏祐です。

経歴

広島県竹原市出身
広島県立広高校卒業
明治大学卒業
倉敷にて2年間着物チェーン店で修行
竹原に帰り家業の呉服店を継いで現在に至る

ごあいさつ

隣の芝は青く見える?

幼稚園時代・真ん中が私・ポーズが
バッチリ決まってます

どうして家業の呉服屋を継ぐ気になったの?

これが、当時家業を継いだとき、お客様に聞かれたもっとも多い質問でした。

私は、小さい頃から両親の仕事ぶりを身近に見て育ってきました。
朝早くから、夜遅くまで、年中休みはほとんどなく、仕事一筋の両親でした。
幼かった頃の私にとっては、甘えたい母親にかまってもらえず、夕食も9時を過ぎることもざらでした。

というのも、当店の商圏には農家の方が多く、朝早くから日が落ちるまで農作業をされ、夕食後家族でゆっくりきものを見に来られる、というスタイルが、一般的でした。
また、お勤めの方や自営業の方は、やはり土曜日、日曜日、祝日に来店されます。
だとすれば平日に休みを取ればいい、ということになりますが、当時の田舎のこの地方ではそういう考えは、ほととんどなかったようです。
むしろ平日に休むこと自体に罪悪感すら感じる、といった具合です。

また当時は、店先のワゴンに積んだ「ウールやアンサンブルのきもの」が、飛ぶように売れた時代でした。
お蔭様で当店も地元のお客様に支持され、他にも高級呉服とされた、京友禅や加賀友禅、東京友禅のきもの、また西陣の手機の帯などを中心に取扱い、いわゆる老舗の繁盛店として商売をさせて頂いていたようです。

しかし子供の私には、家業の繁盛より何より、周りの友達がうらやましくてしかたありませんでした。
「ごく平凡なサラリーマンになり、土、日、祝日はお休み。一家団だんらんを満喫し、休日には家族そろって外食をしたり、子供と思いっきり遊んだり、連休は家族旅行、お盆、正月は里帰り。つまり楽しい家庭を築く」という生活のスタイルが無意識のうちに私の憧れになっていたと思います。

青い鳥はどこにいる?

学生時代・勉強も少しだけ?してました
最前列の一番右の男前?が私

そこでこの憧れに近ずくために私が考えた作戦とは、田舎からの脱出
つまり「東京の大学に入り、東京でサラリーマンになる」。
                以上。
そんな目標?を見失うことなく、運よく東京の大学に入学することができ、一安心。
その時は、大学に入学したことよりも何よりも、これでサラリーマンへの第一歩が実現しつつあるという何とも言えぬ解放感と安堵感に満ちていました。


家業のこと、長男としての責任、単調な田舎暮らし、インフラの整っていない不自由な生活…という呪縛から解き放たれるのだ…といった感覚でしょうか。
学業もそこそこ、学生生活も楽しい、なんとか都内の会社に就職も内定し、このままいけばそこそこの人生かなあ、と思い始めた頃久しぶりに、実家で正月を迎えることになりました。
数年ぶりの帰省でした。

相変わらず、忙しい年末年始なんだろうな、年越しそばどころか除夜の鐘を聞きながら、熱燗を一杯なんてありえんだろうな、年が明けると朝寝坊でもして、ぞうにを頂いておせちで一杯、これもないな。
まるで「
忙しさの不幸の確認」のための帰省です。

案の定、師走の29日、30日、31日は最後の納品と集金でテンヤワンヤです。
正月1日、2日、3日は着付けで朝早くからビッシリ予定が詰まっています。
そんな両親の仕事ぶりを久しぶりに見た私は、何故かこれまで抱いていた思いとは、まったく違う印象を持ちました。

それは両親にとっては、単に「忙しい毎日を送っている」のではなく、
毎日が充実して精一杯生きているということではないだろうか。
以前、読んだ本にあった『
魂のご馳走』というやつではないだろうか。

「魂のご馳走」とは『
人は単にお金のためだけに働いているのではなく、人から感謝されたときにこそ、ほんとうの幸せを感じるようだ。
それは、自分の力で成し遂げたことが誰かのためにもなるとき、そのことに対して与えられる「ほんとうの幸せの感覚」、神様からのご褒美である

育てて頂いた父と母
父の生前中に於いて撮影

改めて両親の動き、しぐさ、顔つき、そしてお客様との会話、笑顔いっぱいのお客様を見ていると確信できました。

「年内に仕立ててくれてありがとう」「正月が来る前に払いに来ましたよ、ありがとう」、「朝早くから着付けしてくれて、ありがとう」、「きれいに着せてくれて、ありがとう」、「良いきものを見立ててくれてありがとう」。

お客様から返ってくるのは、「心からの笑顔とありがとう」。
「いえいえ、どういたしまして、いつもありがとうございます」と返す両親。

やっと分かりました、彼らが何のために仕事をしているか、何がモチベーションになって、忙しい仕事をこなしていけるのか、そして彼らが仕事をしているほんとうの意味…


好きな着物を通して人のお役にたち、必要とされ、喜ばれて、感謝される
そして、決して安いとはいえない代金をいただく。
これぞ呉服屋みょうりに尽きるというものです。

あんなに逃げ出したいと思っていた「私の家」に、これまでにはは味わったことのない『なにか』を感じたのです。

 

修行をしましょう

修行中こんな感じで
頑張っていました。

そこそこの人生もいいけれど、私も「魂のご馳走」を食べてみたい。
いままでの人生では味わったことのない『なにか』を食べてみたい、この気持ちからもう後戻りができなくなりました。

「さあこれからどうする」。
分からないことがあれば、分かっている人に教えを乞う。これしかありません。
「よし、修行をしよう」。

内定していた会社には事情を説明し、理解していただき了解をいただきました。
しかし母校の就職実績にかかわることなので、周りの方々に大変迷惑をおかけしました。

もうやるしかありません。
それから修行にしかるべき呉服店に入社させていただき、新しい人生の始まりです。(給料は頂く予定の半分になりましたが)
しかし、お金をいただきながら、教えていただける。ありがたいことです。

広島に本社があり、広島県、岡山県に12店舗ほどあるチェーン店です。
倉敷店配属になり修行は2年間に及びましたが、慣れない土地、人間関係、何といっても苦労したのは女性ばかり12、3人の年配の女性をマネージメントする仕事。
他にも、商品知識、店舗運営、等々の勉強。

「なんじゃこりゃ」というような女性同士のいがみあいの仲裁。
私にとって一番しんどかった時期だったと思います。
15人の同期入社のうち、私が退職する2年後に残ったのは、私を含めて2人でした。

しかし計り知れないほど大きなのものを得させていただいたのも事実です。
商品知識、商人としての心得、「作り手、問屋、呉服店、消費者」四方良しの考え方、人間としての基本的礼儀、等々。

中でも私の大きな財産となったのは、家業を継いだ後すぐに入会した「全国から集まった呉服店経営者の勉強会」です。
そこで全国のいろんな呉服屋さんとお付き合いさせていただきました。
ここでの勉強が
私の人生を変えた「魂のご馳走を食べるのだ」、という思いを再認識させてくれました

十人十色、反面教師

ある作家さんの工房を訪ねたとき色を
挿している女性の職人

いわゆる京友禅のきものが出来上がるまでには、何人もの職人さんの熟練した仕事の積み重ねがあります

つまり分業制なのです。
まず白生地を創る生地屋さん、下絵を描く人、染める人、刺繍をする人、絞り染めをする人、等々…。
そしてそれをプロデュースする作家さんや問屋さん。

そんな丹精込めて出来上がったきものが、どんな形で日本全国のお客様に届くのか、どんな人が売っているのか、いくらで売られているのか、ちゃんとコーディネートしているのか、お客様の役に立っているのか、喜んで頂いているのか?

この業界に入るまでは当然、私の父と母のやり方がすべての呉服屋のビジネスモデルだと思っていました。
つまり「信用ある染屋さん、問屋さんから一品一品、吟味して商品を仕入れることはもちろん、注文があればその方に似合うものを創っている染屋さん問屋さんを選び、商品を取り寄せ、お見立てする」(今でいえば、コーディネートあるいはスタイリングです)。


また「地元に根付いて、親子三代に渡りきものの御世話をさせていただきながら、その信用を礎に、また新しいお客様が来てくれる」そんな呉服屋のイメージしか私にはありませんでした。

全国から集まった呉服店主の勉強会
銀座・パーラー資生堂にて

なぜこんなことを言うのかというと、いろんな呉服屋さんを見て、こうも商品に対する思い、きものを売ることへの思い入れ、呉服屋という仕事に対する考え方、の違いがあるのか!と感ずることがあまりにも多すぎたからです。

呉服屋といっても、まあ~ いろんなタイプがあります。

  • ウチのように地方で、自店舗で代々続いているもの(数の上では一番多いタイプですが、廃業する店がどんどん増えています)
  • 地方でも地方都市の一等地で、わりと大きな店舗をかまえ10~20人くらいの従業員を抱えているもの
  • ショッピングモールやスーパーなどに出店し2~3県にまたがり10~20店舗くらい出店している、いわゆるローカルチェーンと呼ばれるもの
  • 全国展開でショピングモールやスーパーなどに出店し、50店舗以上あるもので、ナショナルチェーンと呼ばれるもの
  • 百貨店の呉服屋さん
  • 実店舗はよくわからないが、ある季節になるとテレビCMを流し、大ホールやホテルで大展示会をするもの
  • 呉服屋とは名乗っていないが、有名人を使った全国的テレビCM、チラシをまき、大きな売り上げを上げているもの
  • ネット販売 等々…。

これは見た目でのタイプの違いですが、売り方、扱っている商品もそれぞれにちがいます。

それぞれみんなに使命がある

自分の使命が全う出来れば
最高です

どこが良い悪いではなく、これだけの呉服店のタイプ、数があるということは、お客様のニーズがそれぞれにあるということです。

まだまだ違った業態の呉服屋があります。
我々のようにきもの業界にたずさわり、きものを愛するものにとって、どんなタイプの呉服屋であれ、この業界が活性化してくれることは、嬉しいことであり、またありがたいことです。

当店は私達なりに呉服屋としての使命があると考えます。

それは「ほんもののきものと、最高のコーディネートで、きものの楽しさと素晴らしさを広め、きものを着る機会と場を設け、きもののある豊かな人生を提案します。
そして、一人でも多くのきものファンを増やし、日本一親切な呉服屋を目指します
。」

小さな呉服屋ですが、「よりハイセンスな商品の探究とコーディネートのセンスの向上、そして良心的価格をつらぬく」をモットーに、これからも努力を続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

有限会社益吉
代表取締役
益吉呉服店代表
益吉宏祐